具体的な鍼・灸の治療効果について

Q6. はり(鍼)の治療とはどのようなものですか。

髪の毛ほどの細さの金属の用具を用いて行うのが「鍼治療」です。 実際は使い捨ての鍼を使用し、症状や、治療する体の場所に応じて、鍼先が皮膚に触れる程度のものから、鍼の半分まで刺すものまでといった、様々な東洋医学的・西洋医学的なアプローチの治療法があります。

Q7. きゅう(灸)の治療とはどのようなものですか。

米粒ほどに固めたモグサを皮膚に置いて着火し、を温熱効果を期待する治療法が「灸治療」です。

皮膚がほんのり赤くなるものから、直接皮膚にはモグサを付けず、暖かさのみを伝えるなど、いろいろな治療法があります。

Q8. 鍼と灸の治療効果には、どのような違いがありますか。

鍼が皮膚に触れたり、差したりする機械的な刺激に対し、灸は温熱的な刺激ですが、基本的に鍼と灸は、ほぼ同じ治療効果が期待できます。

Q9. 鍼灸の研究にはどのような内容がありますか。

これまでの研究では、鍼灸で身体の一部を刺激すると、中枢神経の中にモルヒネのような役割をもったホルモン(内因性オピオイド)が放出され、このホルモンが痛みを脳に伝える神経の経路をブロックします(鎮痛効果)。

また、鍼灸刺激は、神経を刺激して結果的に血管を広げ、血行を促進し、痛みや疲労の原因となる物質を老廃物として排出させる作用も持っています(血行改善)。

さらに、自律神経に効果的に作用し、胃腸や心臓・血管などに作用しその働きを調節します(内臓反射作用)。また、灸治療が、結核感染に対して一定の効果があるといわれています。

最近は、鍼灸刺激が生体の自然治癒力を高めること、白血球などを増やしてヒトの持つ免疫力を賦活させる働きがあることが分かって来ました(生体防衛)。

Q10. 鍼灸は実際にどのような症状に効果がありますか。

現在、鍼灸治療を受ける多くの患者さんは、腰痛や肩こり、ひざの痛みを訴えて来院します。こうした運動器に関係する症状の他、慢性的な痛みや、自律神経のバランスを崩してしまった体調の改善など、鍼灸はさまざまな症状に効果があることが知られるようになりました。

Q11. WHOが発表した鍼の適応症を教えてください。

1996年に、WHO(世界保健機関)は、鍼の適応となる49疾患の創案を作成し、翌年には、NIH(アメリカ国立衛生研究所)から、鍼灸療法の病気に対する効果とその科学的根拠を認める見解が発表されました。

上気道疾患
急性上顎洞炎、急性鼻炎、感冒、急性扁桃炎
呼吸器系疾患
急性気管支炎、気管支喘息(合併症を持たない小児において最も有効)
眼の疾患
急性結膜炎、中心性網膜炎、近視(小児)、白内障(症状のないもの)
口腔の疾患
歯痛、抜歯後疼痛、歯肉炎、急性咽頭炎
胃腸疾患
食道噴門痙攣、しゃっくり、胃下垂、急性・慢性胃炎、胃酸過多症、慢性十二指腸潰瘍(除痛)、急性十二指腸潰瘍(症状のないもの)、急性・慢性腸炎、急性細菌性下痢、便秘、下痢、麻痺性イレウス
神経学的および筋骨格系疾患
頭痛、片頭痛、三叉神経痛、顔面神経麻痺(初期3~6ヵ月以内のもの)、打撲による麻痺、末梢神経系疾患、多発性筋炎の続発症(初期6ヵ月以内のもの)、メニエール病、神経性膀胱障害、夜尿症、肋間神経痛、頚腕症候群(五十肩Frozen Shoulder、テニス肘)、坐骨神経痛、腰痛、関節炎